アンティバース、アウターリム

好きな作品や好きなスタジオについて書けたらいいなと思ってます

Endgame Study 06: アッセンブル!!!『アベンジャーズ』

Endgame Study 06

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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アベンジャーズ

 

 

 

いよいよとりあえずここまできました。

 

一区切りということで、今回は本文は4000文字、余談もたっぷり2000文字、内容も特濃かつおそらく本邦初の話題を取り上げました。間違いなく読む価値あります。少なくとも余談は。 

しかしこれをあと2週間分続けなければならない、長期休みも終了し本業も開始しちゃったということで己に課したハードルがあまりに無理ゲーであるかというのを認識せざるを得ない。と同時にマーベルスタジオズが成し遂げてきたその偉業を日数が進むにつれて疲弊する自らの肉体を持って感じることができるのでこのMCUラソンは一回やってみることをオススメしたいですね。

 

 

 

 

 

 

ここからが偉業

で、『アベンジャーズ』は何度見ても偉い

そもそも2008年から2012年までの4年間の総決算であるわけで、徹頭徹尾ファンサービスが詰まっている。いつ観返してもこの作品のワクワク感が薄れることはない。

 まずそもそもプロットが『七人の侍』なので面白くならないわけがない。S.H.I.E.L.D.たちは農民であり勘兵衛。

 

アバンのS.H.I.E.L.D.の施設は砂漠にトンネルと、やはり『キャプテン・マーベル』のあの施設と一緒だろう。過去作要素を無視してると言われがちだが『キャプテン・マーベル』はよく拾っている。そもそも『アベンジャーズ』の時点でここはプロジェクト・ペガサスの施設だった。

 

アベンジャーが次々と顔見せしていくワクワク感がまずいい。

4年間で張り巡らされたコマが、S.H.I.E.L.D.という大きな組織を繋がりとして召喚されていく。『アベンジャーズ』におけるS.H.I.E.L.D.の存在感は非常に大きい。彼らなくしてこのクロスオーバーはなし得なかっただろう。

 

この顔見せがまたそのキャラクターがどういうキャラなのかわかりやすいのも親切設計だなと。コールソンのオタクなキャラも掘り下げられる。

クインジェット内のコールソンとキャップの「あのスーツは古すぎないか?」「今から起こることを思えば、古風なものこそが人々の支えになる」という会話で『CAFA』に続き「キャプテン・アメリカというシンボル」という概念が顔を見せる。

 

 

ウェドンのキャプテン・アメリカ、そしてクロスオーバーのツボ 

アベンジャーズ』はジョス・ウェドンのキャプテン・アメリカ観が垣間見えて面白い。彼の中でキャップは潔癖主義者で、それでいて軍人的だ。ヘリキャリア上での「見慣れた光景だ」というセリフがそれを示唆する。また、終盤の話だが、倒しても倒してもそれでも侵攻を続けるチタウリとNYの状況に、ウェドンはスティーブに諦観の表情をさせたりもする。『エイジ・オブ・ウルトロン』でも同様の描写がある。

キャプテン・アメリカ』三部作の脚本を書いたマルクスマクフィーリーコンビの彼はどんな状況においても可能性を模索し続け、彼らもまたスティーブにはそんな顔はさせないのだが(だからこそインフィニティ・ウォーでの最後に崩れ去る彼が印象的だ)、ウェドンはさせた。

 

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『エイジ・オブ・ウルトロン』での表情。犠牲者は出さないと言いながらも、ウィドウが零す諦めの言葉に少し同感するかのよう


 ここに決定的な違いがあるように思う。

 

ヘリキャリアの発進シークエンスの出来栄えや、美術館での変装ししたスーツ姿のロキの異様な耽美さ、敵になったホークアイの厄介さ、ロキと対峙するキャップの「Not today」という素敵なラインとその攻撃の健気さなど最早ワクワクする所を挙げればこの数分のうちでも枚挙に暇がないのだが、この中でもドイツでロキの演説に歯向かう(ドイツ人だけど急に流暢な英語で喋る)老人がジョス・ウェドンの市民フェチを伺わせていい。NYのウェイトレスや、戦い収束後のスクリーンに映るニュース映像の数々など、彼の手がける2作にはこの市民という存在がヒーロー映画としての強度をもたらした。この辺りは逆にルッソ兄弟マルクスマクフィーリーにはあまり見られない要素でもある。

 

そして流れるAC/DCの『スリルに一撃』。この登場シーンは本当に鳥肌モノだった。ファンサービスの気前の良さ。ここからクインジェットに現れるソー、そしてアイアンマンとソーのバトルまでの畳みかけるようなスピード感は筆舌に尽くしがたい高揚感を覚える。

 

まず共闘の前にヒーロー同士のぶつかり合いを描くのがいい。第三幕、クライマックスでの協力にこのクッションを挟むことによってカタルシスが生まれるだけでなく、こいつとこいつが戦うとどうなるんだ?という誰しもが抱く疑問という名の期待が映像化される喜びがある。いわゆる大乱闘スマッシュブラザーズ的なツボ。『エイジ・オブ・ウルトロン』や『インフィニティ・ウォー』でもヒーロー同士の戦いは展開され、そしてそれらがハルクVSハルクバスター、アベンジャーズVSガーディアンズというファンが夢見てきた対戦カードなのだからやはりたまらない。

 

一転密室スリラー的様相を見せ始めるヘリキャリアの展開から、コールソンという大きな犠牲を払ってついにチームは団結を始める。

だが、彼らは犠牲の上に成り立っているという矛盾をはじまりから孕んでいたのではないか、という気もしている。

 

 

決戦、マンハッタン そして「高さ」への試論

キャプテンの「スーツを着ろ」との指令を皮切りにアベンジャーズは決戦の地へと集結する。 

彼、そしてアベンジャーズにおける「スーツ」の意味がここに詰まっている。

 

ソーとハルクはヘリキャリアから地上へと墜落する。怪物となり機内を破壊の限りを尽くしたバナーはそれでもNYへと赴く。ロキの謀略にハマり、地球での友を失ったソーはまだ自分がハンマーに足る者であるのか逡巡する。されど再びハンマーを手に取り、彼もまたタワーのそびえるNYに向かう。

『エイジ・オブ・ウルトロン』でのソコヴィアに代表されるように、ジョス・ウェドン「高さ」アベンジャーズのヒーロー性のメタファーに用いる。この『アベンジャーズ』においては空高く飛ぶヘリキャリアと2人の墜落、そして決戦の地であるスタークタワーとそこから伸び天を裂くポータルだ。

 

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 タワーからの落下→スーツの装着→浮上→ポータルへと向かうアイアンマンマーク7の装着シークエンスもまたその色が顕著に現れている。

 

なお、ウェドンの手法とあまり関係がないが、世界クラスの危機に対処するアベンジャーズの最初の戦いがビルの屋上とその更に上から這い出てくる宇宙人だったのに対し、ストリートで戦う『ディフェンダーズ』がビルの地下が決戦となっていたのは意識下なのかどうかはともかく、対比が利いていて興味深い。

 

そしていよいよ「いつも怒ってる」が飛び出す。

初見時、映画館でこのシーンを見たときは、アツすぎてアツすぎてどうしようかと思った…………。

バナーは再び怪物になることを選ぶ。ヒーローとして。

ハルクへの変身、アイアンマンの追撃、はじけ飛ぶリヴァイアサン(あのクジラみたいなでかいクリーチャーのことです)!咆哮するチタウリ。

そこからあの記念牌的ショットがスクリーンを覆う。

 

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ついにアッセンブルした。

間違いなくMCU史において最も偉大な瞬間だ。

 

燃えすぎて目頭が熱くなったのはあの時が初めてだった。この眼前で繰り広げられる未知なる領域にただただ打ち震え、そしてなにか冷たいものが頬を伝っていることに気付いた時には驚いた。

 

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※画像はイメージです。



 

 

そしてここまでも偉業で、ここからも偉業。

ここからもワクワクポインツの応酬すぎてどれだけここが偉い、ここがアツいと列挙しても終わらない。

ウィドウの跨るチタウリのスピーダーから始まりキャップとアイアンマンの盾とリパルサーの共同作業、そしてホークアイの狙撃とハルクとソーのリヴァイアサン上の大暴れの豪華な長回しは多数のヒーローの活躍を長回しにおいて同じ時間・空間で繰り広げるという点でヒーローショーイズムを感じてならない。

youtu.be

 

 

ティーブとの口論の中で「僕なら鉄条網を切る」としたトニーがマンハッタンに向けて発射された核ミサイルを自らポータルへと投げ込むまさに「鉄条網に飛び込む」行為をさせたのが上手い。そしてこの行動こそが彼を今後蝕むトラウマを生み、サノスにトニーの存在を知らしめた。

 

こうして彼らは勝利を納める。ロキに向かって佇む6人のショットは『エンドゲーム』でもオマージュしてほしさある。

アベンジャーズへの感謝を述べ、世界は彼ら一色に染まった。

フューリーは世界安全保障委員会の査問に、アベンジャーズの存在感を全ての世界に知らしめたこと、そしてアベンジャーズを集結させ、戦わせたことを所信表明、そして誓いと答える。

この一連のシーンは、マーベルスタジオズによるMCUの行ったこと、そしてこれから行うことへの予言のように思えてならない。

街中はアイアンマンやキャプテンアメリカで染まり、MARVELのロゴは溢れかえっている。そして観客はアベンジャーズをという存在を知った。

彼らは『アベンジャーズ』で世界を変えたのだ。

 

 

フェーズ1からフェーズ2へ

最後に、この作品はS.H.I.E.L.D.がユニバースの接着剤として機能した最後の作品でもある。『アイアンマン3』や『ダーク・ワールド』ではその影を潜め、遂には陥落する。この映画のポストクレジットをもって、ユニバースを繋ぐ鎖は地球のスパイ組織から、宇宙そのものの創成に関わるインフィニティ・ストーンとその力に取り憑かれた狂気のタイタン人に代わる。

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今みるとなんか顔が違う


S.H.I.E.L.D.が壊滅する『ウィンター・ソルジャー』とMCUにコズミックをイントロデュースした『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』が同じ2014年にこの順序で公開されたのはまさにそれを裏付けるようでもあって面白い。

 

 

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そういや、エンドクレジットと言えば、自分は今のところやっぱり『アベンジャーズ』のものが一番好きだ。勇猛なテーマ曲に戦いの後でボロボロのガジェットがズームで映し出されるのがたまらない。

と同時に、この公開までいよいよ3週間を切ったこの時期にその話をすれば否応なしにアベンジャーズ/エンドゲーム』のエンドクレジットが流れるその瞬間を、我々は覚悟せねばならない。

 

 

 

 

 

 

余談ONE SHOT: MCUはいつから「マーベル・シネマティック・ユニバース」と名乗り、呼ばれはじめたのか

 

我々が普段MCU(Marvel Cinematic Universe)と呼んでいるこの一連シリーズは一体、いつそう名付けられ、そう呼ばれるようになったのだろうか?年収は?彼女は?

 

私がここ最近抱いている疑問だ。

呼び名なんてどうでもいい……と思うかもしれないが、作品どうしが世界観を共有しあうシェアード・ユニバースは今日のハリウッド大作において一大ムーブメントであり、MCUは間違いなくその形態のハシリである。DCEU(実際の名称はこうではないが)、ダーク・ユニバース、モンスターバース……様々なユニバースが擁立される中、そのシリーズのアイデアだけでなく、ずっと残り続ける名称の方向性を決定づけたMCUの名前のオリジンを探ることは決して無駄ではないはず。

 

ということで、調べてみました!

 

 

……で、予想していた通りというかなんというか、ケヴィン・ファイギがこの名称をインタビュー等で用いたのはどうやら3作目の『アイアンマン2』前後であるらしい。

 

 SHH: It seems logical that they would try to get you guys more involved like Universal did with “The Incredible Hulk” if only to maintain consistency with the Marvel Universe eventually. Do you think so, too?



Feige: Listen, I never say never. Anything’s possible. If you asked me five years ago, I wouldn’t have thought we’d be talking about “The Avengers” now. For the time being, there’s only one place for connective tissue within the Marvel Universe and within this new MCU, Marvel Cinematic Universe that we’re building and those are in the Marvel Studios movies.

 

 

www.superherohype.com

 なんとMCUとまで略して言っているではないか!!!

これは2010年4月26日に掲載されたインタビューなのでつまり同年5月7日公開の『アイアンマン2』の公開前。やはり『アイアンマン2』が鍵だったようだ。

実は2009年に行われた同作のセット・ビジット時のインタビューではMarvel Cinema Universeと呼んでいたようだが(https://movieweb.com/marvels-kevin-feige-on-the-future-of-the-avengers-thor-ant-man-doctor-strange-and-captain-america/)、先ほどのインタビューにて改められたことになる。歴史が決定した瞬間だ。

 

ただ、この時がMCUと初めて正式に呼称されたのかちょっと疑わしいところもある。インタビュワーが「マーベル・シネマティック・ユニバースですか!いいですね!」と言っているので少なくとも浸透した名称ではなかったのは間違いない。

現在未所持の『アイアンマン』『インクレディブル・ハルク』などの『アベンジャーズ』以前の過去作のパンフ等の資料を集めているので、あらたな新発見があれば書きたい。また、何かご存知の方がいらっしゃったらコメント欄やTwitterでご教授下されば幸いです。

 

ところでマーベルは各ユニバースを番号で振り分けていて、MCUはEeath-199999と指定されている。この番号の初出は2008年10月出版のOfficial Handbook of the Marvel Universe A-Z Vol 1 #5なのだとか。(Earth-199999 | Marvel Database | FANDOM powered by Wikiaより)

 

 

そういえば一時日本においてはMCUという単語はプロモーション上で忌避され、「アベンジャーズ・プロジェクト」という名前で呼ばれていたっけ。

日本におけるMCU受容の足跡を辿るためにもこの件も時間があれば調べたいところ。

 

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当時のフライヤーや宣伝用小冊子、パンフレットなどを引っ張り出した。エンドクレジット後のネタバレが地味にあってキレる