Endgame Study 11: You Rise, Only To Fall,『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』
Endgame Study 11
『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』
「愛を知る───全人類に捧ぐ。」 のポスターはまぁ今となってはそんなこともあったねと笑い話になりつつあるが、『エイジ・オブ・ウルトロン』の残した爪痕はいまだMCUを揺るがし続けている。
『エイジ・オブ・ウルトロン』は、ヒドラの残党のアジトへのカチコミから幕を開ける。襲撃を受ける無線がオープニングに聞こえるというのは、実は『アベンジャーズ』も、そして『インフィニティ・ウォー』でも共通している。
そしてこの長回しはただただ感動ものだ。今作は構成や脚本に多くの問題点を抱えているが、彼らが集結し、戦うだけで“アベンジャーズ映画”としての水準を満たしている。
そんな『エイジ・オブ・ウルトロン』では、いままでの活躍によって名声を高めたアベンジャーズが、大いなる失敗を招いてしまう、文字通りの上昇と落下が『アベンジャーズ』での時と同様のメタファーをもって描かれている。
NYに聳え立つアベンジャーズタワーが象徴的だ。どのビルよりも高くそびえるこのタワーは、アベンジャーズのその名声を表している。
彼らはこのタワーで勝利に酔いしれ、次なる脅威に備えている。ここで開発されるのがアイアン・リージョンを超える平和維持プロトコルであり、アベンジャーズの代わりとなり地球の、そして宇宙の敵に備えるはずだったウルトロンである。このウルトロンをこの高みのなかで開発してしまったことで、彼らは凋落する。
そして、ウルトロンによる隕石ことソコヴィアこそがまさに彼らの上昇と落下を示唆する。
「You rise, only to fall.」
ソコヴィアを上昇させ、アベンジャーズたちにこう語るウルトロン。
ウルトロンの反乱も、ソコヴィアの破壊も、ある種の驕りが招いた出来事だと彼は語る。後の作品でも語られている通り、この一連の出来事はアベンジャーズが生んでしまった失敗だとみなされている。アベンジャーズはウルトロンを生み、そしてこの行動が後に被災者の遺族であるジモの動機を生んでしまう。ジモの計画によってアベンジャーズは完全に決裂し、そして決裂は大敗を生んだ。
ソコヴィアを隕石のように落下させ人類を死に絶やし、自らと同じく機械に地球を染める(=Age of Ulton)のが彼の目的だった。最後にソコヴィアを落下させることが、アベンジャーズの名声の下降を比喩的に表している、というのは強引な見方だろうか?
ソコヴィア後、アベンジャーズはタワーから新たな施設に移行する。オリジナルメンバーは散り散りになり、また新たなメンバーで再スタートを切る。あの高くそびえるような塔からこの施設に移ったのはまさにそういう事ではないか?(ということにしておいてください)
『エイジ・オブ・ウルトロン』の発端は恐怖だった。トニーはワンダの妖術により「自分以外のメンバーがチタウリによって全滅する」という『アベンジャーズ』以降に苦しめられてきた恐怖を幻視し、この恐怖からウルトロンの開発を進めていく。
キャップは過去最大の後悔であるダンスの約束を幻視し、ウィドウは暗い過去を幻視する。
だが、ソーは自らの民が死ぬこと、そしてヴィジョンとストーンについてを幻視する。
民が死にゆくこと、ヘイムダルが「我々はみな死んだ」と語るのは『ラグナロク』そして『インフィニティ・ウォー』のステイツマンを想起させる。そしてストーンとヴィジョンの覚醒については間違いなく今作の出来事を予知するものである。
また、ブラック・ウィドウに関しては製作中の単独作が過去編になるという噂がかねてより囁かれている。
これらの幻視は過去、未来などがそれぞれのキャラによって扱われているが、個人的にはどれも同じくMCUそのものの未来を暗示するものだと思っている。
マインドストーンなどのストーンは量子的なものにアクセスしうる力を持っており、その量子の有する時空を超越する力を秘めている、と自分は考えている。
なんだか怪しい展開になってきたが、ここでウルトロンの興味深いセリフを紹介したい。
「When Earth starts settle, God throws stone at it. And believe me, he's winding up」
このセリフはワンダに頭の中の隕石直撃のイメージを読み取られた事から発する計画の暴露のうちにあるもので、文脈こそ恐竜の時代の滅亡やノアの箱舟になぞらえて自らの地球ウルトロン化計画を話しているのだが、やはりこの「ストーン」が気になるところだ。
ここのセリフと、ウルトロンの動機について4年前から思っていたことがあって、元々ウルトロンは地球の平和維持の為に創られたが、その実、人類の滅亡を目的に動いていた。しかしウルトロンそのものに関しては人類を滅ぼしこそすれ地球を維持するという目的は彼が言うことを読むに変わってはいない。星の住民を脆く争いを好む不完全な人類から不死身で統制のとれた自分たちにすげ替えるということが彼の平和維持のやり方である。
で、考察で考察をするという事実性の薄い意見で恐縮なのだが、時空を超越しうるマインドストーンそのものだったウルトロンは、実はサノスによる計画を予め察知していたのではないか? サノスの進撃と計画を防ぎ、地球を存続させる為に生命体である人類から機械に入れ替えようとしていたのではないだろうか、と。
『エイジ・オブ・ウルトロン』は実にユニバース構造らしい映画で、不完全に思われた要素が後の作品で活かされたりすることによってまた新たな面白さが生まれてくる。
そして、作品内で数々の幻視があったが、アベンジャーズ2作目にして早くもチームの終わりについて言及するなど、作品そのものも幻視しているかのような描写があるのも面白いところだ。もちろん、このセリフも。