アンティバース、アウターリム

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Endgame Study 02: もっとこの緑を見てくれ『インクレディブル・ハルク』

Endgame Study 02

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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インクレディブル・ハルク

 

 

 

 

 

 

インクレディブル・ハルク』はおそらく最も無視されているMCU作品のひとつだろう。

 

ブルース・バナーがおなじみのマーク・ラファロとは違ってエドワード・ノートンだったり、正直作品そのものに華が無かったり、単純にそもそもMCUとして認識されていなかったり…。敬遠される要素が多く、とにかく不遇な作品だ。そもそも本国ではパラマウントでもディズニーでもなくユニバーサル配給という点がこれまたややこしい(これはハルクの映像化権利が関係するのだが)。

しかし、これらの要因で今作をスキップしている方がいれば、その選択は非常にもったいない。

 

インクレディブル・ハルク』はとっても面白いので……。

 

 

 

インクレディブル・ハルク』はクールなモーショングラフィックスのクレジットで語られるハルクのオリジンから幕を開ける。もうここからカッコいい。オリジンを簡単な説明ですっ飛ばすのは『ホームカミング』的でもある。この辺りの取捨選択は一貫しているのだなぁ。

また、このオープニングクレジットにはスターク・インダストリーズやニック・フューリーなどの名前やロゴが見られ、ファンはニヤリとさせられる。

 

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対ハルク超音波発生装置はスタークインダストリーズ製

 

 

この映画の基本的なプロットはロス将軍と傭兵ブロンスキーの追手をかいくぐろうとするブルースの逃走劇だ。故にストーリーはアクションによって展開される。

猥雑なブラジルの街を、アメリカの大学の図書館を、とにかく走る。そして面白いのが、心拍数が一定の数を超えるとハルクになってしまうのでどうにか興奮状態にならないように自らを制限しつつ逃げまわらねばならないことだ。

心拍数モニターの警告音がこのチェイスの緊迫感を演出しつつ、“緑”が徐々にその姿を見せ始める。この演出は素晴らしい。(そしてなおかつ、心拍数の上昇を避けるためバナーが恋人のベティと愛し合えないという面白ながら彼の悲哀を描いた名シーンがある)。

 

何気に『インクレディブル・ハルク』は『ウィンター・ソルジャー』が登場するまでで最もソリッドなつくりをしたMCU作品だった。ミリタリー色も強く、ロス将軍のお役人映画でもある。

今作の色彩構成はシリアスな作風を表現するかのようにキマっている。そのなかで緑色がこれでもかと画面のなかを支配しているのがクール。

 

 

バナーを追うためにロス将軍から雇われた傭兵、ブロンスキーがこれまたいい。

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ハルクと対峙し、徐々にその強さに魅了されていき、ロス将軍による血清によって超人兵士になる。大学構内での戦いはキャプテン・アメリカも顔負けの身体能力を見せつける。

2回目の血清注射を経て、更なる力を求め精神が壊れゆくブロンスキーはハルクの血液を輸血する。そうしてブロンスキーはアボミネーションへと変貌する。

 

ヒーローとヴィランにそれぞれ共通する要素や鏡のように背反する設定を盛り込むのはその二つの表裏一体の関係を浮き彫りにし、双方のドラマをリアルにする効果があるのでよく用いられるが、同じパワーソースを持つ彼らが戦うのはちょっと石ノ森チックなものを感じなくはない。(そして元を辿ればそもそもロスの計画していた超人兵士計画にはスティーブがいるわけで……。こういう意味でもやはり彼は“ファースト・アベンジャー”なのだ)

 

アボミネーションに変貌したブロンスキーはハルクとの決戦を求め、ハーレムのストリートで破壊の限りを尽くす。

ここからが特にアツい。

ラグナロク』でも引用されたヘリからの飛び降り、その衝撃による変身。

炎の海と化したハーレムの道路で向かい合う2体の怪物。

ぶつかり合い、壊し、飛び跳ねるこの戦闘のなんと素晴らしいことか!!!

クライマックスの戦闘が比較的短めな傾向にあるMCUでもこの戦いは上映時間との比率で長いのもまた魅力的だ。

ましてやハルクのピンチに怨敵であるロス将軍たちが機銃で応戦する。アツい!!!!

そしてベティに襲い掛かる炎を拍手の風圧で吹き飛ばすハルク!!!これぞ超超人的パワーの使い道だ!!!

 

キメ手はハルク・スマッシュ!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

ハーレムの戦いはいまだMCUにおいて5本の指に入るほどのベストバウトだ。

 

シチュエーション、ファイトスタイル、映像快楽、すべてが揃っている。ここだけでも鑑賞する価値は十分にあると保証したい。

 

ちなみに、何気にフェーズ1において『アイアンマン』『マイティ・ソー』とこの3本はクライマックスに巨体の敵が街中で暴れるという点が共通している。

 

あなたが『アベンジャーズ』『マイティ・ソー/ラグナロク』が気に入ったのに『インクレディブル・ハルク』を観ていないのなら、それは非常にもったいない。この映画を観れば、あ!そういうことだったのか!ここから来ていたのか!と唸るはずだ。

 

とにかくインクレディブル・ハルク見よう!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

 

 そういえば、『アントマン』のように元カノの今カレが優しい要素は今作にもあった。なにかそれに関する思想信条がファイギたちにあるんだろうか……。